原作
この作品の原作をアンリ・シャリエールという人が書いてます。(1906年~1973年)
彼は、フランス人で、1931年に殺人事件の容疑者といて、フランス領ギアナの島で、無期懲役の受刑囚になりました。
その刑務所から何度も脱走を試みますが、何度も何度も失敗します。しかし、1944年についに脱走に成功します。そして、ベネゼエラの市民権を得て余生を一市民として過ごしました。
その後、自分の経験したことを小説に著しました。その小説が「パピヨン」として世界的にヒットとしました。
そして、小説は1977年に映画化され世界的にヒットし、アンリ・シャリエールの名も映画とともに有名になりました。
このようなことから、この映画はいわゆる「ドキュメンタリー映画」または、「伝記映画」とも言えるでしょう。
残念なのは、原作者のアンリ・シャリエールが、映画の撮影中に亡くなってしまったことです。原作者であるからこそ映画の公開をきっと楽しみにしていたはずなのですが…。
スティーブ・マックイーン
1970年代のハリウッドを背おった大スターです。
少年時代は不遇でした。苦労と努力を重ねた末、映画俳優になりました。
下積みの後、出演した「荒野の七人」「大脱走」で人気に火が付きました。その後、多くの出演作に恵まれ、人気とギャラが高騰し、世界的な大スターになりました。
代表作として、「ブリット」「シンシナティキッド」「ゲッタウェイ」「タワーリング・インフェルノ」などがあります。
そして、「ハンター」という作品を遺作とし、1980年に50歳という若さでなくなりました。
筆者の私は、高校生のころ1980年の12月に公開された「ハンター」をリアルタイムで観ることができました。
マックイーンが癌の転移に苦しみながらも、不屈の闘志で、この映画の撮影をしたことを知り、映画館の椅子で背筋をピン!として、真剣に鑑賞したことを覚えています。
ユニークさとアクションシーンがバランスよく散りばめられた良質な作品でした。
ダスティン・ホフマン
ダスティン・フォフマンの代表作は、なんといっても「卒業」でしょう。
悩める青年の無軌道な行動を内省的な演技で表現しました。結婚式場から、花嫁を強奪して逃走するラストシーンはあまりにも有名です。
その後、着実にキャリアを重ね、今では、ハリウッドの重鎮です。その演技力は、映画評論家や映画ファンからも高く評価されています。
私のお気に入りは、障害がある男を演じた「レインマン」です。自閉症であるがゆえに他人とのコミュニケーションがで難しい主人公の兄を演じました。
この作品では、自閉症特有の動きや表情などに感心したものです。その演技力は主演のトム・クルーズを完全に喰っていました。
「トッツィー」という作品Ⅿのも好きです。男性が女装して活躍する内容は、BGTQ+の人権を叫ぶ現代では、絶対にタブー視されそうなテーマです。
女装したホフマンのとぼけた演技がすばらしい名作です。
近頃は、映画出演が少なくなってしますが、ホフマンは、ハリウッドにはなくてはならない存在です。
ストーリー
胸に蝶「「パピヨン」という蝶の刺青をいれた男が南米ギアナのサン・ローラン刑務所に送られてきました。
彼は、常に「自分は無実」だと言い、何度も脱獄を企てます。そして最後に脱獄に成功します。
それまで、金で脱獄を手伝う者に幾度も裏切られたり、はめられたりして、独房に監禁されます。
その独房に入れられる期間は数日ではなく、数年なのです。その独房でのマックイーンの演技が圧巻です。
体が徐々に衰弱していく様子や、精神を病んでいく様子などの演技に目はくぎ付けになります。
体を蝕められても、生きる希望だけは不屈の闘志で持ち続けるパピヨンの眼差しが鋭くとても印象的です。
そして、島からの最後の脱獄のシーンは、2人の友情と海の美しさが際立つ名シーンです。
ただ、ちょっと残念なのは、パピヨンが乗っているいかだの下にダイバーらしい人影を確認してしまうことです。
この映画を作製した時には、CGの技術はなかったのですからダイバーが見えてもしょうがないかもしれません。現代に放送する際には、CGで完璧に消しておいてほしいと思います。
監督
監督は巨匠フランクリン・J・シャフナーです。この作品の他に「猿の惑星」などの大作があります。
「猿の惑星」では、アカデミー名誉賞を「パットン大戦車軍団」では、アカデミー作品賞他、7部門の賞に輝いています。
「猿の惑星」の驚愕のラストは、その後のSF映画に多大な影響を与えました。CGのない時代なので、猿の顔は、メイクらしいですが、その時代のハリウッドの技術力の高さを感じます。
その上、「パットン大戦車軍団」は、主演のジョージ・C・スコットの演技が素晴らしです。
その演技で、アカデミー主演男優賞を受賞しましたが、なんと彼は辞退しました。アカデミー賞を「下らないお祭り騒ぎだ」と一蹴するすごい俳優です。
彼の演技は、もちろんシャフナー監督の巧みな演出があってのことでしょう。
音楽
この名作の音楽を担当したのは、ジュリー・ゴールドスミスです。彼は、場面に応じた音楽をつけることに定評があります。
特に、緊迫した場面や、苦しい感情などを高める場面に応じた楽曲は他の追随を許しません。
大作に応じたスケール感のあるダイナミックな曲を書くのが特徴でしょう。
有名なものは、「エイリアン」「カサンドラクロス」「トラ・トラ・トラ」などがあります。
私が好きなのは、カサンドラクロスの情感たっぷりなスコアです。作品のせつなさを物悲しさがよく表現されています。
リメイク版
この名作のリメイクが作られています。
2017年の作品です。監督は、マイケル・ノアー、主演は、チャーリー・ハラムとラミ・マレックです。
ラミ・マレックは映画「ボフェミアン・ラプソディー」で、フレディー・マーキュリーを演じ、高い評価を受けました。
その役で2018年のアカデミー主演男優を受賞しています。さらに、同年、ゴールデン・グローブ賞も受賞しています。
さて、内容はというと、オリジナル版とに比べ、悲壮感や自由への執念などの高まりが、あまり感じられませんでした。
俳優の演技力の差かもしれませんが、主人公の感情が痛いほどよくわかるのは、オリジナル版の方です。
リメイクの方が、映像は格段にキレイなのですが、迫力が乏しいという感じがしました。
オリジナル版の方が、CGがない時代なのですが、一つ一つのシーンに迫力があるのです。絵に迫力があるのです。
リメイク版の方は決してつまらない作品ではないのですが、オリジナル版を鑑賞した後では、全体的なクオリティの低さを感じることは、否めません。
ただ優れていたのは、原作者をアンリ・シャリエールに対する畏敬の念はリメイク版に軍配が上がります。
まとめ
このように「パピヨン」は古い映画ではありますが、映像に力があるので退屈することなく一気に鑑賞することができます。
今、コロナウイルスの感性症予防のため、誰もが我慢を強いられています。そろそろ限界を感じている読者のみなさんも多いことだろ思います。
「パピヨン」は、人間の忍耐力と、希望について深く考えさられる内容となっています。鑑賞してみると主人公に共感し、もう少し、自粛や感染症予防をがんばっていこうと思えます。
家で過ごす時間が多くなった今日ですが、往年の名作を鑑賞し、感動をかみしめ、コロナに負けない勇気を与えてもらってはいかがでしょうか。