もくじ
ブレードランナーを久しぶりに観ました。今回で、5回目の鑑賞となります。
4・5年位の間隔をあけて鑑賞しています。この度、この作品を鑑賞するきっかけになったのは、最近4KTVを購入したからです。
NHKで「4Kシアター」(過去の名作に費用と手間暇をかけて、4Kに修復した映像作品)という番組があります。
その放送で、人生最高画質のブレードランナーを見てみたかったからなのです。
はじめに
この作品を初めて鑑賞したメディアは、ビデオテープでした。次は、LD(レーザーディスク)、その次はDVD、そしてブルーレイディスク、さらに今回の4K映像です。
時代とともに段階的に高画質を追求しながらこの作品を鑑賞してきました。ですから私にとって、とても思い入れのある作品なのです。
それでは、このSF映画の金字塔「ブレードランナー ファイナルカット4K版」について語っていきましょう。
難解なストーリー
この作品が公開されたのは、1982年です。その当時は、ETが公開され世界的に大ブームになっていました。私は、大学生で友達数人とETを見に行き、ストーリーとCGの素晴らしさに深く感動したことを覚えています。
もともと子どものころから映画が好きな私でも、当時「ブレードランナー」の情報は全く入ってきませんした。それもそのはず、この作品は、ETの公開の影に隠れ、興行的には全く振るわず話題にもならなかったからなのです。
また、当時の観客がその難解なストーリーについていかれなかったからだとも言われています。しかし、公開された数年後、じわじわとファンを増やし、年月をかけてヒットしました。
作品のクオリティが認められ、今では多くのカルト的なファンを擁するようになったのは、そのストーリの難解さも手伝ってからでしょう。
公開から数年が過ぎ。ストーリーにやっと観客が追いついたとまで言われるようになった作品なのです。
現代の人はSF映画免疫がたっぷりとあるので、ストーリーについて来れないということはことはないでしょう。
結局、私は、公開後10数年たってからこの作品の存在を知ることになりました
あらすじ
2019年のロスアンゼルス、人間を越えた知力と体力を持つレプリカント(人造人間)が造反し、ロイ・バッテリーをリーダーとしたした一味が市内に潜伏する。
彼らの発見と抹殺の命を受け元特捜班の刑事ディカードは、製造元であるタレイル社を訪れ、レプリカントの寿命が4年と短命にセットされていることを知る。
デッカードとレイチェルは互いの身分を忘れ惹かれ合っていく。自分たちの寿命を知ったロイは、タレイル社長を殺し、ディカードをビルの屋上に追い詰める。
通りでレプリカントに襲われたたデッカードは、タレイル社の秘書レイチェルに救われるが彼女もレプリカントだった。
ディテールの素晴らしさ
近未来の造詣が素晴らしいです。(本当は2019年の設定なので過去なのですが)いたるところに日本テイストが出現します。
「二つで十分ですよ。」(これがわかる人はよほどのブレードランナー通です)と語るうどん屋の店主、街のあらゆるとことにある日本語の電子看板、飛行物体の大ディスプレイに浮ぶ芸者の姿など、枚挙にいとまがありません。
さらに、空から見える荒廃した酸性雨が降りしきるロスの街並み、たくさんのイルミネーションが美しい巨大なタレイル社の造形など、今見てもそのビジュアルセンスに感心してしまいます。
そして、登場人物が乗車するエア・カーのデザインとその性能、さらにはデッカードが所持するレプリカント用の銃のデザインなど、画面に映る全てのものが斬新で魅力的です。
これらのSFビジュアルに熱烈なファンは心を奪われてしまったのでしょう。
効果的な近未来音楽
サウンドトラックは「炎のランナー」のヴァンゲルスです。俯瞰で映し出す近未来の町並みにシンセサイザーを駆使したヴァンゲルスの音楽が流れ、作品を格調高いものにしています。
そして、キラキラ輝くクリスタルのような効果音は東洋感あふれるロス・アンジェルスをまるで無国籍の街のように彩っていきます。
ヴァンゲルスの計算つくしたサウンドは、観る者を荒廃した未来の世界にゆっくりと誘います。
個性的な登場人物・配役
ディカードを演じたのは、大御所ハリソン・フォードです。”スターウォーズシリーズ”と”インデージョーンズシリーズ”との間での主演です。
押し殺したような演技で、ハリウッドのトップスターとしての貫禄を示しています。この内省的なハードボイルド的な演技で、俳優としての新境地を開きました。
ヒロインのレイチェルを演じたショーン・ヤングは、当時それほど目立った存在ではありませんでしたが、この作品で注目され、売れっ子女優になりました。その存在感はまるで女神のようです。
アンドロイドの儚い人生をとても優雅に魅力的に演じています。その美しさたるや、主人公ディカードが惹かれてしまうのも無理もないと納得させられてしまうほどです。
レプリカントのリーダーのロイを演じたのは、ルトガー・ハウアーです。惜しくも先日この世を去ってしまいました。
彼は、人間以上に人間的な悩みを抱えたレプリカントの苦しみを情感豊かに演じました。ディカードの敵なのですが、ロイに感情移入した観客も多かったというのもうなずけます。
女レプリカントのプリスを演じたのは、ダリル・ハンナです。妖艶さと可愛らしさを合わせた物悲しい演技で、慰安用レプリカントの儚さを表現しています。
ロス警察のガフを演じたのは、エドワード・ジェームズ・オルモスです。有名なアメリカドラマ”マイアミ・バイス”で冷静沈着な警部を演じています。
この作品では、突然姿を現したり、消したりするあやしげな警部を不気味に演じています。
彼がいたところには、必ず折り紙の立体が残されており、それは、未来に対する不安を増幅させる役割を果たしています。
他の登場人物も、皆、素晴らしい演技で、作品に奥行きと臨場感を与えています。どのキャラクターも強烈な個性を持っているのもこの作品の魅力です。
作品のバージョンの多さ
この作品は、1982年に公開されてから2007年までに、5つのバージョンが作られました。現在まで、7つのバーションがあるとも一説では言われています。
バージョンごとに意味深な場面が追加され、全く異なる解釈になるようです。
今回の「ブレードランナー ファイナルカット4K版」では、”ユニコーンが疾走する夢?”のようなシーンが追加されていました。
この場面から「デッカードもレプリカント?」と考えることができるのかもしれません。でも、それは観る人によって解釈が異なるのです。
「デッカードもレプリカント?」という疑問や可能性については、コアなファンの中でも議論になるようです。
いずれにせよ、いろいろなバージョンが存在し、多様な解釈ができることが、この作品の存在感を高めているのだと思います。
原作は、SF小説
原作者は、フィリップ・K・ディックというアメリカの小説家(1928‐1982)です。ディックが書いた「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫)」 が元ネタになっています。
私も読みましたが、小説の内容もなかなかクセがあり面白いです。しかし、小説の中には、「ブレードランナー」という言葉は出てきません。
映画用の造語だと思います。映画の題名が「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」であればここまで長期にヒットしなかったのではないでしょうか。
「ブレードランナー」という音の響きがいいですね。
続編の存在
2017年には続編が作られました。「ブレードランナー2049」という題名です。前作から35年の月日が流れました。
監督は名匠リドリー・スコットからハリウッドから期待される新星ドゥニ・ヴィルヌーヴゥニに代わりました。
私は公開と同時に劇場に足を運びました。感想はというと、「ブレードランナーの退廃的な雰囲気は踏襲している。」「上映時間がやや長い。」「レイチェルがそのまま出てきてびっくり」「この展開SFだから許せる。」「さらに続編ができる可能性があるかもしれない。」です。
続編を観た今までのファンは、賛否両論だったようです。正当な続編と認める人もいれば、全くダメだと言う人もいるようです。
私は、続編が作られたこと、そして、それを劇場で観れたことで大満足です。
終わりに
「ブレードランナー ファイナルカット4K版」は、最高の画質と最高の音質で、最高のブレードランナーを表現してくれました。
この映画の虜になっている私は、また、4・5年後に6回目の鑑賞をすることでしょう。そのときは、「ブレードランナー 8K版」なのかもしれません。
この記事を読まれた方は、是非、NHK「4Kシアター」再放送を鑑賞してみてください。この映画の魅力を十分感じるとることができると思います。是非!
「デイテールに凝り、映像的に圧倒される2019年へのトリップ。それはまるで何度も見る悪夢のように観客を突き刺す。」
「サンデー・タイムス」紙のコメントより
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